Breast cancer therapy

乳がんに対する治療は、非浸潤がんか浸潤がん、転移を伴わない場合と転移を伴っている場合に大別して考えます。
診断及び浸潤の有無は針生検により腫瘍組織を採取し顕微鏡的診断(病理組織検査) によって診断されます。

  薬物療法 手術
非浸潤がん 原則不要 必要
浸潤がん 他臓器転移なし 必要 必要
他臓器転移あり 必要 原則不要

薬物療法

乳がんの性格は厳密には患者さんごと「十人十色」ですが臨床の場では免疫染色という試薬を用いて行う組織検査の手法によっていくつかのタイプに分類し、そのタイプに応じて薬剤を選択します。

薬物療法
グループ 女性ホルモンを餌にするか否か
HER2(ハーツー) 蛋白を作るか否か
Ki-67 蛋白(増殖マーカー)が高いか低いか
悪性度 推奨度
術前療法 術後療法
化学療法 ホルモン療法 化学療法 ホルモン療法
Luminal
(ルミナール) A
する 作らない 低い 低い
Luminal
(ルミナール)B
する 作らない 高い 高い
する 作る 問わず 高い
HER2 陽性 しない 作る 問わず 高い
トリプルネガティブ しない 作らない 問わず 高い

当院の乳がん治療の順番

他臓器転移を伴わず、乳がんの属するグループの悪性度が高い場合には手術を前提とした術前薬物療法(術前化学療法や術前ホルモン療法) の選択が、手術の結果リンパ節転移など進行度が高い場合は化学療法を選択する、といった治療方針が一般的であり、当院の治療方針も同様です。化学療法を含めた薬物療法は当院にて診療しています。

術前化学療法の効果

右局所進行乳がん 悪性度が高く、リンパ節転移を伴う状態に対し、術前化学療法を行った患者さんの画像です。その結果下記画像にように腫瘍の縮小を認めました。即ち、腫瘍の縮小により全身に播種している可能性のあるがん細胞に対しても同様の効果があるものと推測されます。

  • 化学療法前の乳がん
    化学療法前の乳がん
  • 化学療法の効果により縮小した乳がん
    化学療法の効果により縮小した乳がん

当院の乳がん手術方針について

当院は入院・手術設備を併設しないため、当院院長の担当・執刀でご了承頂いた患者さまについては、共同診療(連携) 施設である秋田赤十字病院にて手術をおこなっております。術式については、患者さまの病状やご希望をお聞きしながら時間をかけてご提案させて頂いております。院長及び当院手術業績についてはこちら(診療業績)をご覧ください。

当院の手術方針についてご説明いたします。

乳がんの手術術式は以下の二つに大別されます。

1. 乳房部分切除術(乳房温存術)

腫瘍とその周囲だけを切除し、残りの乳房を温存する手術です。
乳がんの手術適応と判断した場合、まずは乳房部分切除が可能か否かを検討します。極論、乳房部分切除はいかなる場合も可能ですが、当院の考える乳房部分切除術=乳房温存術は「整容性の維持が可能か」、つまり完全に手術前と全く同様の乳房を維持することは不可能ですが、可能な限り術前に近い「見た目」が維持できる場合に乳房部分切除術=乳房温存術が可能、と判断します。その場合、乳頭乳輪の温存を通常含みます。
主な判断基準は腫瘍の部位、切除範囲と乳房のボリュームの関係、等であり、皮膚切開(縫合部) についても極力目立たない・目立ちにくい・将来目立ちにくくなるような方法を原則としています。
術後の局所再発(手術で残した乳房に、がんが再発すること) のリスク軽減目的に温存乳房に対する放射線照射が標準治療として通常適応となります。

乳房部分切除術(乳房温存術)
外側の場合

  • 乳房の外側、正面視では見えない位置に皮膚切開(きず) を置きます。

  • 上記のように比較的広い皮下剥離を行いますが、部分切除後の欠損部を充填(埋め合わせ) しやすくなる、即ち欠損部の直上の皮膚の落ち込みを最小限にできる=乳房の整容性の維持(可能な限りの見た目の維持) という利点があります。

  • 概ね上図のように欠損部の埋め合わせを行います。

乳房部分切除術(乳房温存術)
内側の場合

  • 乳輪周囲に皮膚切開(きず) を置くことが多く、時間の経過とともに縫合線が目立ちにくくなることが多いです。

  • 内視鏡を併用して上記の如く広範囲の皮下剥離を行うことにより、部分切除後の欠損部を極力充填(埋め合わせ) する工夫をしています。

  • 概ね上図のように欠損部の埋め合わせを行います。

乳房部分切除術(乳房温存術)
下方の場合

  • 乳房下方の場合、部分切除後の欠損部をそのまま充填(埋め合わせ) しても、引き連れを伴ってしまうことが多く、術後経過とともに顕著となることがあります。

  • 皮膚切開は長くなりますが、乳房の下溝線(アンダーバスト)に隠れる位置に皮膚切開を置き、上方腹部の皮下脂肪組織を処理し(有茎脂肪弁といいます)、欠損部に組み入れる工夫を行っています。

  • 概ね上図のように欠損部の埋め合わせを行います。

2. 乳房切除術(乳房全摘術)

乳房部分切除術が適応とならない方、全摘をご希望する方が適応となります。
乳房再建は乳房切除後でも可能ですが、乳頭乳輪・乳房皮膚を温存するご希望をお持ちの場合、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘術の選択肢もございます。乳房再建については秋田赤十字病院 乳房再建担当医と連携し、患者さまとご相談の上、決定しています。

乳房切除術(乳房全摘術) の場合

  • 定型的な全摘の方法です。温存術が適応とならない場合、患者さんが希望する場合に行います。

  • 術後は平坦な状態となります。

乳房切除術(乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘術) の場合

  • 外側の皮膚を切開し、乳頭乳輪を含め乳房皮膚全体を残す術式です。

  • 皮下剥離線と大胸筋前面の剥離線の間を切除します。

  • 術後は平坦な状態となりますが乳頭乳輪は残すことができます(皮膚は切除しません)。

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